どんな声を出せばいい?
Lesson3でもお話した通り、まずはボイスレコーダーなどに自分の声を録音してみるのがおススメです。そうして自分の声を確認して、どのような声質をしているのか理解しましょう。
俳優を目指すのであれば自分の声の質まで気にする必要があるかもしれませんが、そうでない人にとっては、会話の際に
- 大きな声
- ハッキリとした聞き取りやすい声
この二つの条件をクリアしてさえいれば、声に関する心配はなくなります。
それぞれの条件を満たすためには意識的に大きなハッキリとした声を出そうとする努力をすれば良いのですが、しかしそうすると今度は「意識的に大きなハッキリとした声を出す努力をする」ことにワーキングメモリを割いてしまい、本末転倒です。発声に意識を持っていかれないためには、何も考えなくとも自然とはきはきした声が出るようにトレーニングをするしかありません。
よりよい発声のためのトレーニング
体力づくり
ランニングや水泳などを利用して体力を作り、肺活量を鍛えましょう。もちろんボイストレーニングの中には「肺活量を鍛えるのではなく、呼吸法や息継ぎによって発声をコントロールする」というアプローチもありますが、初心者にとって大切なのはまず体力、そして基礎的な肺活量です。
健康的な成人男性は3000~4000ml、成人女性は2000~3000mlだと言われています。運動やトレーニングを続けている人の中には7000mlを超える方もいらっしゃいますから、トレーニングによってどれだけの余裕が出来るか分かりますね。人間は一度の呼吸でおよそ500mlの空気を交換していますが、肺活量が多ければ多いほど交換に余裕が生まれて息継ぎが楽になるという寸法です。
肺活量を鍛えるにはダイエットにもなる有酸素運動が一番ですが、もっと手軽な方法もあります。たとえば500mlの空のペットボトル(なるべく柔らかめのもの)を利用することもできます。空のペットボトルが潰れるほど思いっきり息を吸い、限界まで潰したら全力で息を吐いて元通りにします。これを繰り返すだけでも肺活量を鍛えることが出来ます。

この方法を採用する際は同じペットボトルを極力使わないように注意します。口には雑菌が溜まりやすいので、ペットボトルの再利用は極力控え、風船などを利用するようにしましょう。
腹式呼吸
様々な健康のもととなる腹式呼吸は良い声を作るのにも便利です。基本は簡単です。息を吸う時にお腹を膨らませ、息を吐くときにお腹をへこませるだけです。男性はもともと腹式呼吸の方が多いのですが、女性は出産時に腹式呼吸が出来ないため胸式呼吸が身についてしまっていることが多いのです。
トレーニング方法は簡単です。お腹を膨らませながらゆっくり大きく息を吸い、しっかり吸ったら数秒間息を止め、今度はお腹をへこませながら息を全て吐きます。これを一日5分程度繰り返せば、自然と腹式呼吸が身につくはずです。また、腹式呼吸の練習と一緒に腹筋を鍛えるのも効果的です。
発声練習
ボイストレーニングの世界では滑舌の向上のために発声練習を行います。有名なものとして、学校の音楽の授業などにも取り入れられているピアノを使った歌の練習があります。ピアノの音階に合わせてリズムよく「ドレミファソラシド」を発声するのです。これは音感も一緒に鍛えられるのでおすすめの方法と言えますが、ピアノのような音の出る楽器がないと音階を合わせ辛いのは難しい点です。
最もおすすめなのは、演劇の世界のトレーニングとして良く使われる発声練習です。まず、「あああああ かかかかか さささささ……」と全ての行の母音がAのものを繰り返し発声する練習を行ってみましょう。
こうすると自分の苦手な「子音」が分かります。その行が滑らかに発音出来るように集中的に鍛えると、他の発声練習の効果も相乗的に高まっていきます。
全ての子音をきちんと発音出来るようになったら、今度は「あいうえおあお かきくけこかこ……」と50音を発声する練習をやってみましょう。各行の最初と最後をくっつけて全ての行をハッキリとした音で発声できるまで繰り返すと、滑舌が良くなります。「O-A-O」の口の動きを作るのは大変良い練習になります。
早口言葉
早口言葉もまた滑舌を鍛えるのに効果的です。
- バスガス爆発
- 東京特許許可局
- 坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた
- 蛙ぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ
他にも「あめんぼあかいなあいうえお」から始まる「あめんぼの歌」(北原白秋作)など、演劇の発声練習に良く用いられる歌が沢山あります。これらを隙なく歌えるようになるまで頑張ると、自然と話すだけでも美しい滑舌になっていることでしょう。