コミュニケーションにも型がある
人間には様々な属性があります。
性別(男・女)、年齢(子供・大人・老人)、人種、宗教、出身地……生まれ持った性質から来るものなどさまざまですが、人はこれらを利用して他者を分類します。
分かりやすいのは血液型や星座でしょうか。血液型自体は性格に何らかの影響を及ぼすわけではありませんし、星座も特に本人の気質とは関係ありません。それでもA型と聞けば私たちは「マメな人」「几帳面な人」という印象を受けがちですし、占星術師に自分の性格を言い当てられると、おっ、となるものです。
一部の人は自分が典型的な枠の中に納まっているとなんとなく安心するものですし、あえて自分を「几帳面な性格」「大雑把な性格」に当てはめようとする傾向もあります。
また、自分をステレオタイプの中に押し込もうとする意思がなくとも、得意分野を伸ばし嫌いなことから逃げ続けていると、だいたい似たような性質を持つグループの中にいつの間にか落ち着いてしまうことがあります。
もちろんコミュニケーションの特徴によっても人間は分類可能です。たとえば太っ腹でおおらかだけど常に強い決断を求めるタイプ、引っ込み思案で慎重だけど仕事は冷静に行うタイプ、何事も計画通りに行わなければ気が済まないタイプ……といった形で「あなたは〇〇タイプ!」と人を特定の型にはめて分析する方法があります。
これは1968年に二人の産業心理学者によって提唱されたもので、一般的には「Social Style(ソーシャル・スタイル)」と呼ばれています。
ソーシャル・スタイルとは?
ソーシャル・スタイルとは、”人間を社会的態度傾向により類型化し、その違いを認識することで対人関係の向上を図っていこうとする考え方“のことです。分かりにくい場合は血液型を例に想像してみてください。
- A型の人……几帳面
- B型の人……マイペース
- O型の人……ロマンチスト
- AB型の人……器用で純粋
一般的にはこんな風に言われていますね。これが「類型化」です。「その違いを認識する」ということは、たとえばA型の人を相手にするときは「AさんはA型だから几帳面だ」と認識し、「人間関係の向上を図る」ために目の前にあまり乱雑に物を置かないように注意しよう……と念頭に置いてA型の人に合った対応をする、という感じです。
B型の人と一緒に住んでいる時は、脱いだ服をソファーに投げっぱなしでも良かったかもしれませんが、A型の人と一緒ならきちんとハンガーにかけておかないと相手を苛立たせてしまうかもしれない、と思い悩んだりしますよね。そのコミュニケーション版がソーシャル・スタイルの考え方なのです。
理論的なところを少し補足しましょう。人間の行動は一見バラバラです。たとえば目の前に泣いている人がいると想像してみましょう。ある人は駆け寄って慰め、ある人は理由を問い質し、またある人は自分に関係ないこととして素通りします。その行動は人によってバラバラで、何の法則性も見えません。
また、泣いている人が「恋人」「知人」「見知らぬ人」の場合を想像してみましょう。恋人だったら慰めるかもしれませんが、知人なら「何かあったの?」と理由を聞くだけに留めてしまうかもしれません。「見知らぬ人」であれば、たとえ気になったとしても、そもそも関係を持とうとせずに素通りしてしまうこともあるでしょう。
人間の行動は状況や相手によってさまざまに変化してしまいます。そこには何の法則性もないように見えるのですが、本当にそうでしょうか? 社会学や心理学は、一見法則性がなさそうに見える行動を定量的に分析し、科学的に仮説を立てて実証していく学問です。人の行動の傾向を説明できるような、何らかの法則性があるかもしれません。
こうして打ち立てられた概念がソーシャルスタイルなのです。1968年、産業心理学者のディビット・メリルとロジャー・リードによって明らかにされました。
四つのスタイル
ソーシャルスタイルには四つの型が存在します。
数学の座標を思い出してみてください。横をX軸、縦をY軸として、XとYの軸が原点Oで交わるあの座標です。中学生くらいになると、XとYを使った方程式で直線を描いたり、二次関数の曲線を描いたりしたあの座標平面です。

座標平面はX軸の方向(正負)とY軸の方向(正負)で四分割されます。まずXを「自己主張」、Yを「感情」としてください。そして自己主張が強い人はX>0、弱い人はX<0、感情が表に出やすい人はY>0、出にくい人はY<0という風に分類します。たとえば自己主張が強く感情的な方は座標の右上のグループ、といった形で性格に合わせたグループ分けを行います。
- 自己主張=強 感情=強 エクスプレッシブ
- 自己主張=強 感情=弱 ドライビング
- 自己主張=弱 感情=強 エミアブル
- 自己主張=弱 感情=弱 アナリティカル
日本語ではそれぞれ上から順に「社交型」「行動型」「友好型」「理論型」と言われるものです。しかし、人の性格傾向は外からはなかなか分かりにくいものがあります。
次のLessonでは、ソーシャルスタイルの概念に沿った分類の仕方をお伝えします。