他人を頼るのは無能の証明?
他人を頼るのは無能である、という考え方があります。
しかしそれは誤りです。優れている人、社会的地位の高い人、なんでも完璧に出来る人ほど他人を頼る意味とその方法を熟しています。彼らに言わせれば「他人を頼る」のは恥でもなんでもありません。
その理由として代表的なものを挙げてみましょう。
人は全ての能力を極められない
時間は有限です。もしわたしたちが皆1000年生きるような日が来たとしても、時間が限られていること、そして学べる内容に限りがあることに変わりはありません。もし1000年自由に使っていいと言われても、現在日本で認められている資格を全て取得するのは難しいでしょう。
当たり前の話のように聞こえますが、どんなに要領が良くとも万能の天才にはなれません。レオナルド・ダ・ヴィンチにさえ出来ないことがあるのですから、他人の力に頼るのは当然のことです。
様々な人生経験を積み、何か一つの能力を極めている人ほど頼れる他者の重要性を理解しているのです。
一人で抱え込むのは非効率的
どのような仕事でも一人でこなしてしまうスーパーマンのような方もいますが、必ずしも有能とは限りません。様々な業種の人々が絡む仕事であれば、各工程を特定の分野のスペシャリストに頼む方が、はるかに良いものが出来ますし、己の能力にあった仕事により多くの時間が割くことができます。
たとえば、計算が得意な人と文章を書くのが上手な人がいて、報告しなければならない仕事が二つあるとしましょう。計算の得意なAさんには二つの計算と確認を済ませてもらい、その結果を受けたBさんが二つ分の仕事の報告書を書く。こうして分業した方が、AさんBさんが一つずつ報告書を完成させるより遥かに効率的であることが多いのです。

Aさんが大量の仕事を抱えているとしましょう。同僚のBさんはまだ十分な余力を残しているとします。このとき、 Aさんは自分の仕事を一部引き受けてくれるようBさんに頼む方が結果的に効率的に回るのはよくある話です。Aさんが仕事を抱え過ぎて倒れてしまったりすると、当該の仕事が宙に浮いたまま期日が過ぎてしまうという結果になるかもしれません。
また、AさんがBさんに上手く頼ることが出来れば二人の間に信頼関係が生まれますし、BさんもいざというときはAさんに頼んでいいのだと安心できます。
人に頼ることでつながりを作る
人は孤立しては生きていけません。先ほどのAさんとBさんのようにお互いに仕事を融通することが出来るようになれば、AさんとBさんの間に交流が生まれますし、そこから友人関係が発生することもあります。人を頼るのは「あなたに期待している」「あなたに大事なものを預ける」というメッセージにもなりますから、どちらかといえば好印象を抱かれやすいのです。
より多くの方とつながりを持てばいざという時に頼りになる人脈ができますし、「この仕事はあの人にお願いしたい」と考えたときに速やかに行動できます。
人に頼るのは無力だからとか、他人の手を煩わせるのは恥だと考える方は、人脈作りの大切さに思い至らないケースが多いのです。人に頼るのに慣れている方は、自分が困っているときだけでなく、単につながりを作りたいとか久しぶりに会いたいとかそういう理由から頼みごとをすることもままあります。
誤った思い込みから「お願い」したり「依頼」したり出来ない方は、頼るタイプのコミュニケーションの経験をほとんど積まないまま大人になってしまいますし、いざ本当に困ったときに行動できません。恥だという意識を捨て、積極的に頼ることで交友関係の幅を広げていきましょう。