Lesson4-2 口下手=コミュニケーションが下手、ではない

口下手≠コミュニケーションが下手

コミュニケーションに関しては様々な書籍や講座が溢れていますが、その多くは「口下手」であることを弱点として捉えています。実際に口下手な方は人と上手く会話できないことに悩んでいたりしますし、考えていることを上手く言葉に出来ずに悩む傾向にあります。

しかし、口下手=コミュニケーションが下手、という考えは間違っています。その理由を以下に並べていきましょう。

口下手は聞き上手?

前述の通り、コミュニケーションの上手な方は必ずしも優れたトークスキルを持っているわけではありません。この人と会話したい、一緒にいたいと思わせる力、つまり場を和やかにして居心地の良い空間を作る能力を持っています。

口下手な方は確かにトークスキルが高いわけではありませんが、人の話を聞く能力については問題ない場合も多いのです。野球で喩えるなら、口の上手い方はピッチャーで口下手な方はキャッチャーでしょうか。ピッチャーが九人いても野球は成り立ちません。きちんと相手の球を受け取れるキャッチャーはどのような場面でも重宝されますが、ピッチャーがいなくては成り立ちません。

口下手は誠実?

「自分はコミュニケーションが上手い」と考えている方にありがちな話ですが、話を面白くするためについつい話を盛ってしまったり、大げさに内容を改変してしまうことがあります。

たとえば「自動販売機が壊れていたので飲み物が買えずお金だけ持っていかれてしまった」という不幸な出来事に襲われたとしましょう。口の上手い人は自分の不幸を強調するために、100円玉ではなく千円札が戻ってこなかった……という風に話を盛ってしまうことがあります。

口下手な方は往々にして「話を盛るのは誠実ではない」という考え方を有しています。確かに100円が千円になったくらいなら大した問題でもなく、嘘とはいっても誰も傷つけることのない些細なものです。しかし、口下手な方は往々にして「(100円損しても特に大した話じゃないけど、嘘をついてまで話を大きくするのは良くないな……)」と考えてしまうので、そこで話をやめてしまうのです。

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信頼できない人に大事な話をすることはなかなかありません。口下手な方は確かにトークスキルを持っていないかもしれませんが、じっと相手をしていると「この人は誠実なんだ」という印象を受けることも多々あります。

逆に、会話が面白い人でも、ときどき明らかな嘘が混じっていたりすると、信頼度が下がってしまうことも多々あります。大事な話が出来る相手と出来ない相手、コミュニケーション能力が高いのはどちらでしょうか?

ちなみに上記の自動販売機の例ですが、本当にトークの上手い人ならどう処理するでしょうか。「100円を千円に盛る」というやり方には縋りません。正解はたくさんありますが、その中の一つは「100円が無駄になったこを大げさに話す」ことです。正直者であるという印象を与えつつ「そんな大騒ぎするようなことじゃないでしょう」といった反応を引き出す、つまり相手が返球しやすいような球を投げてあげるのです。

喋り上手だって悩んでいる

口下手な方が「自分は人と話すのが苦手だから」と悩んでいるように、話し上手な方も「喋り過ぎてしまった」と悩むことがあります。これは話し上手な方にありがちな問題ですが、聞き手が何か返そうとした瞬間に被せるように「自分の話を続けてしまう」という弱点があるのです。

コミュニケーションを相互の意思疎通と考えると、自分から喋れない人も相手に喋らせられない人も50点どまりなのです。

口下手が大きな欠点であるというのは誤解です。それだけではなく、口が下手でもトークの勉強さえすれば喋り上手になれる可能性だって残されているのです。大切なのはトークスキルが未熟だからといって卑下しないことでしょう。

もしあなたが喋り上手であるなら?大事なのは、喋るのが下手な相手を見下さないことでしょうね。