インターネットの登場
テレビというマスメディアが覇権を握る状況を大きく変化させたテクノロジーがインターネットです。元々アメリカの軍事研究の産物として生まれたインターネットは20世紀後半から21世紀にかけて、凄まじい勢いでテレビの覇権を突き崩してきました。
コミュニケーションにおいて、インターネットというテクノロジーは1対多のマスメディアではないところに大きな特徴があります。インターネットはメディアであると同時にコミュニケーションの”場”であり、一対一、一対多、多対多の双方向的な対話を可能にするものでした。
もしマスメディアを「講演会場」とするなら、インターネットはよりローカルな「酒場」であると言っても良いでしょう。しかもこの酒場は、特別に遮断されない限り誰でも入場可能であり、誰にでも発言権があります。ここに「限られた人しか発信できない」マスメディアとの大きな違いがあります。
インターネットがコミュニケーションの在り方に与えた影響は、テレビによる洗練とは正反対のものでした。発信者はみな素人である可能性があり、必ずしも洗練された作法ばかりが使われるわけではありません。むしろここで起こったのは原点回帰に近い現象でした。日常的な誰でも使う言葉、ホームビデオで撮影したような動画、特別な誰かではない一般人の日記、そういったものが需要があると判断され、消費されていきました。

私たちのコミュニケーションは、本来は自分の身の回りでしか発生しないものです。文字媒体や電波通信技術が発達することで一度は「遠くの知らない誰か」に語りかける技術が興隆しましたが、インターネットの誕生により、「遠くの知らない誰かを身近に感じる」ようになったのです。
私たちは遠く離れた友人の生活をリアルタイムで知ることが出来ますし、他人の部屋に上がらずともSNSやブログの記事を読んで「あの人がその日何をしたか」を知れるようになりました。本来なら手の届かない場所にいる有名人に対して直接メッセージを送ったり、総理大臣やVIP、セレブの生活を覗き見ることも可能です。
SNSの発展
インターネット自体は遠く離れた人間同士の距離を埋めることができるテクノロジーですが、これを基盤として発展していったのがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)です。
SNSの発展は、
- 誰もが情報を発信できる
- 誰もが情報の受け手になれる
- 物理的な距離の遠さを感じない
というインターネットの特性に上手く合致し、twitterやFacebookなどのソーシャルメディアを筆頭に急成長していきました。
また、インターネット回線の強化により大容量通信が可能になったこと、誰でも高画質の写真や動画を簡単に撮影できるようになったことから、言語ではなく写真や動画を直接アップロードすることで感情を共有するというコミュニケーションのあり方が生まれ、受容されるようになりました。
たとえば、大雪が降った時に「雪だよ!」と発言するのと、外の景色を写真や動画に収めてアップロードするのとではどちらが分かりやすいでしょう? もちろん後者ですね。テクノロジーの発展により、私たちは自分が五感で得た情報の言語化を経ることなく、直接不特定多数に届けることが出来るようになりました。
インターネット、およびSNSを通じて音楽や動画・写真を利用したコミュニケーションの技術が洗練されていった結果、音楽や動画制作の技術が創作能力のみならずコミュニケーション能力として評価されるようになってきています。