発達障害とは?
「発達障害」という言葉は近年様々なメディアで取り上げられるようになりました。しかしながら、定型発達の人が多数派であるせいか、発達障害の実態についてはあまり深く知られていないのが現状です。このLessonでは発達障害について基本的かつ正確な知識を得て、それがコミュニケーションに対してどのような問題が生じるのか見ていきましょう。
早速本題に入りましょう。
発達障害とは「様々な要因により乳児期から幼児期にかけて特性が現れる発達の遅れや偏りがあること」を指しています。
例えば、
- 共感性に欠けるせいで対人関係を上手く築けない
- 言語能力に問題があるため回りくどい言い回しばかりになり、コミュニケーションに問題が生じる
- 物事の手順などに偏りがある
など、特定の能力が定型的に発達していないため生活に困難が生じている人に見られる障害です。「特定の能力が定型的に発達していない」という言い回しを理解するのはちょっと難しいかもしれませんが、分かり辛い場合は定期テストを想像してみて下さい。
どの教科も平均点を上回っているのに、一教科だけ赤点を取ってしまった……このような「凹み」が脳機能に見られるのが発達障害です。

みんなが喜んでいる場面で一人だけ全く感情の動きがない、授業中にじっとしていられない、といった子供の話を聞いたことがあるかもしれませんが、感受性が鈍いとか落ち着きがないで片付けられる段階を通り越している場合は、広汎性発達障害や注意欠陥・多動性障害などの発達障害の可能性があります。
子供の頃にはなかなか気付かれませんが、「実は」言語処理能力に問題を抱えていた……というタイプの発達障害もあります。たとえば「子供を見ていてください(危ないことをしないかどうか注意して見張って下さい)」と言われて、本当に文字通りの意味で子供を「見て」いるだけで危ないことを始めても止めに入らない、といった話は有名ですね。
他にも「他人から皮肉を言われても分からない」とか、相手に心の傷を与えるような発言を何のためらいもなくしてしまうなど、言葉の与える影響や重みを理解出来ていない方もいます。これもまた発達障害の一種で、アスペルガー症候群に分類されるものです。
発達障害の特徴
発達障害の特徴的なポイントをまとめてみましょう。
- 全人口の数パーセント程度の割合で生じる
- 知的障害を伴わないことが多い
- 根本的な治療方法はなく、また先天的な特性である
私たちがなぜ発達障害になるのか、という原因についてはまだ解明されていません。以前はワクチンや親の愛情不足(虐待など)により子供が発達障害になるという説が有力でしたが、現在では先天的な障害であることが分かっており、遺伝や環境要因によって決まるという説が主流となっています。
また、発達障害に悩んでいたとしても、コミュニケーション能力や社会的な適応力が伸びないとは限りません。確かに発達障害は前述の様々な問題行動を引き起こしがちですが、今のところ知的には正常である人の方が多数派であり、社会に適応するための訓練等で生活を安定させる芽はあります。
もしあなたが発達障害であったり、身近な人が発達障害であったとしても、悲観する前にその特徴を正しく把握することが大事になります。
発達障害とコミュニケーション
発達障害ゆえにコミュニケーションに問題がある場合、この講座で取り扱う内容に目を通す前に、まずは精神科のある病院を受診して検査を受け、自分の状態を正しく把握することが大切になります。その際は前回のLessonで学んだWAIS等の心理検査を実施する可能性もありますので、もし自分が発達障害なのではないかと疑問に思った場合は、個人で心理検査を受ける前に病院へ行きましょう。
もし発達障害と診断された場合は、まず自分の困りやすいポイントを熟知し、適切なサポートを受けるようにしましょう。一部の処理能力だけが定型発達していないのであって、言い換えれば他の能力には問題がない可能性も高く、職種によっては適合できる可能性も十分に残されているからです。
たとえばアスペルガー症候群が原因で他者とのコミュニケーションに問題がある場合でも、言語理解や文書・会話を利用したコミュニケーションの必要性が少ない職種であれば、問題なく働ける場合があります。
コミュニケーション講座の内容としては不適切かもしれませんが、発達障害やコミュニケーション障害を抱えている場合、コミュニケーション能力の向上よりも「自分(あるいは他人)がどのようなコミュニケーション上の問題を抱えているか」を理解することが大切です。ADHD(注意欠如多動性障害)の場合は、注意が散漫であること、頭の中の整理や制御が苦手であることや、思ったことをすぐに発言してしまう傾向にあることを理解しましょう。
もし自分がADHDなどのコミュニケーション上の問題を抱えている場合、思い切って周りに相談してみるのも手段の一つです。会話が難しいこと、気分にむらがあること、指示を適切に読み取れないことがあるなど、コミュニケーション上での不安を話し、自分の特徴に応じた対処を求めましょう。
本講座では度々取り上げますが、自分のトークスキルだけでなく、相手に居心地の良い空間を提供するなど「他者を尊重する」態度を身に着けるのはとても大事なことです。もし発達障害の人と一緒に働く機会があっても、相手を理解し適切な対応を取れるよう練習を積み重ねていれば、必要以上に身構える必要もないでしょう。