コミュニケーションのスキルを上げる毎日
これまでのLessonでコミュニケーションスキルの上達方法についてはおおむねご理解いただけたと思います。
コミュニケーションのスキルを磨くには「肉体のトレーニング」「ワーキングメモリーの増強」「トークスキルの獲得」「心理学的なスキルの獲得」「一つ一つの会話を課題化する」といった方法が有効でした。
しかし、それらを常に心に留めておいて時と場合に応じて実践するのは意外と難しいものです。私たちは日常生活ですぐにものを忘れてしまう生き物ですから、何かを身に着けたいなら特に強く意識しておかなければなりません。「今日は〇〇の練習をしよう」と思っても、実際に空き時間が近づくと習慣的にやっている他のことに手を出してしまうものです。
それを防ぐためにはどうすれば良いでしょうか。一番簡単な方法は「お金を払う」です。お金を払って人にものを教えてもらうと、やはり「支払った分は取り返さないといけない」という気持ちになりますから、忘れずに練習に打ち込めますし、十分な熱意のある状態でプロの指導を頼れます。
次に簡単な方法は、人に管理してもらったりスマートフォンのアラームやToDoの機能などを用いることです。日々「これをやりましょう」というリストを作って、休憩時間や帰宅時に合わせて「時間だよ」と教えてもらったりアラームを鳴らしたりすることで、忘れずに練習に取り組むことが出来ます。
今回のLessonでは、今まで学んだことをまとめて消化できるような、コミュニケーションスキルを上達させるための一日のスケジュールを考えてみました。スケジュールに沿って行動することで無理なく毎日少しずつコミュニケーションスキルを上達させることが出来るようになる定番のメニューです。
もちろん、全て消化する必要はありません。人の生き方は様々であり、またコミュニケーションにおける得意不得意もまるで異なります。自分に合ったものを自分にあったタイミングで消化できるように、自分に合わせてスケジュールを改変しながら使ってみましょう。
コミュニケーション練習に特化した一日
起床~登校・出勤
目覚めと同時に体力トレーニング
早寝早起きを心がけ、朝早くから十分な睡眠を摂った状態でコミュニケーションの練習に精を出せるようにしましょう。まずは目を覚ましてからのトレーニングです。体力を増やすためのランニング等も大事ですが、毎朝30分走るのは健康に良いとはいえ簡単なことではありませんので、ここでは省略します。
目を覚ましてからやるべきメニューは少なめに、腹筋・腹式呼吸・肺活量を鍛えるトレーニング・発声練習を合わせて20分以内にこなします。
- 腹筋20~30回(出来る範囲で無理なく)
- 腹式呼吸の練習(2~3分)
- ペットボトルや風船を膨らませるなどの肺活量を鍛えるトレーニング(2~3分)
- 発声練習(2~3分)
まずこれを一セット出来るように心がけてみましょう。腹筋はもちろん回数をこなすことも大切ですが、少ない回数でも一日2~3回に分ける方が効果的です。一度に100回腹筋をするよりは一日三回30回ずつ腹筋を鍛えた方がお得です。
腹式呼吸の練習は、深く息を吸い込むことで落ち着く、腹式呼吸のやり方を身体に刻み込むなどの効果に重点を置きましょう。習慣的に腹式呼吸を行うことで日々の呼吸を腹式呼吸に自然と置き換えられるようになります。
肺活量を鍛えるトレーニングは腹式呼吸と一緒に「思いっきり息を吐く・吸い込む」で代用してしまっても構いません。ペットボトルや風船を使った方が目安として分かりやすいものですが、雑菌に気を付けなければならないのが手間です。
発声練習は「あいうえおあお、かきくけこかこ……」と五十音表を読んで行くもの、早口言葉、この2種類を交互にやっていきましょう。朝の内に両方こなすのは時間が足りません。
これらのメニューを15分、長くとも20分以内にこなすことで、短時間で効果的なトレーニングを行います。
ニュースの視聴とイメージトレーニング
人と会った時の話のタネを探すため、テレビでも新聞でもインターネットのニュースでも構いませんので、必ず最新の情報を仕入れるようにしましょう。これは午前中だけでなく出勤中でもOKです。
また、登校・出勤前にイメージトレーニングを行っておきます。登校後・出勤後にどのように挨拶をするか、誰とどんな話をするかを頭の中でしっかりとイメージすることで、実際に行動するときにハードルが下がります。
お昼休み
人によってはお昼の休憩が取れるとは限りませんが、もしお昼ご飯を食べてさらに何かする程度の余裕のある方なら、この時間帯に以下のトレーニングを実践しましょう。
- 話題のフックを30個作る
- 定型的な質問の言い回しを覚える
たとえばLesson7-2では「季節、ニュース、名前、ルール、今後、乗り物、みんなのこと」を「気になる好み」と覚えることで7つの話題をいつでも引き出せるようにしていましたね。これをきちんと覚えられているかどうかチェックし、また季節やニュース、乗り物の話題として自分が何を話せるのかを理解し、足りない部分の話題を仕入れるようにしましょう。これを行って30個のフックを作ります。
定型的な質問の言い回しを覚えるのは難しいことではありませんが、外ではなかなか声を出すタイミングがありません。そこで、人の会話に耳を傾けて「誰がどのような質問を出しているか」を盗み、自らのものとしましょう。
もし心理学のテクニック集のような本を持っているなら、このタイミングで初歩的なものから中・上級者向けのテクニックを仕入れてしまうのも良いでしょう。知識の積み重ねがあれば他人の会話が面白く聞こえるようになります。特に喫茶店等で長居していると、そこで営業している方々の声が漏れ聞こえて、コミュニケーションスキルの活用具合が分かるようになる……なんてこともあるのです。
ワーキングメモリを増やす
イメージングや二重課題の練習をすることで、使用できるワーキングメモリの限界を増やします。イメージングについては「さきほど食べたご飯を想像する」「昨日読んだ本の内容を思い浮かべる」などのトレーニングを5分ほど行うと良いでしょう。
二重課題については、頭の中で数字をカウントしながら本を読んだり英会話のスピードラーニングを聞き流したりすることで達成できます。ここで大事なのは、自分の脳に適度な負担をかけることです。
下校・退勤~就寝
勉強会やセミナーへの参加
必ずしも高いお金を払って素晴らしい技術を学ぼう、という気持ちでいる必要はありません。まずは気軽に参加できるところを探し、初対面の方と気軽にお話をする、セミナーに参加することでその分野の基礎知識を身に着けることを目標にしましょう。
もしあなたが特定の技術を極めようとしているなら一つの勉強会にしっかり参加するのが大事ですが、コミュニケーションのために参加するのであれば、十分な理解を得たと思ったらすぐ他の分野のものに切り替えるくらいの感覚でOKです。勉強会やセミナーへは毎日参加する必要はありませんが、週に1~2回ほどの頻度でウィークリーのタスクとして消化しましょう。
身体トレーニング
もし十分な時間が残っているなら、ここで身体トレーニングを行います。毎日30分のランニングが出来るならそれが最善ですが、そうでない場合は「一駅早く降りて歩く」などの工夫をすることで無理なく日常生活に盛り込むことが出来ます。(都市部以外では一駅の区間が長過ぎて使えないかもしれませんが……)
また、帰宅後も午前中と同じように、
- 腹筋
- 腹式呼吸の練習
- 肺活量増強トレーニング
- 発声練習
を行います。これを継続的に行うことで、あなたの身体をコミュニケーションに適したものへと変更することが出来るようになります。
反省と確認、早めの就寝
就寝前に一日のコミュニケーションの反省と確認を行いましょう。その日の挨拶や会話で良かったところ、悪かったところを思い出しながら翌日以降の生活につなげていきます。ここで大事なのは、あまり悪かったところを思い出さないことです。「上手くいったコミュニケーション」を反芻することで成功体験が強化されていき、自然とポジティブな思考を形成していけます。
就寝するときは必ず7時間ほどの睡眠が取れるように早めに布団に入りましょう。
これらのことを実践すれば、あなたのコミュニケーション能力はひと月・ふた月と重ねていく内に飛躍的に上昇します。日常生活の中で全て取り入れるのは大変ですが、まずはこのリストから日常生活に組み込めそうなものを選び、毎日少しずつ消化していけるようにすると良いでしょう。