コミュニケーションは準備が8割
コミュニケーションにおいて大事なのは、準備がその大多数を占めるという認識です。プロのインタビュアーのように「人と話すプロ」と言える人々でも、即興でコミュニケーションを取ったりはしません。
実績を残した人にインタビューをする場合を想像してみましょう。取材対象は何かの賞を取っていたり、有名な学説を発表して広く世に受け入れられているものとします。その場合は「どのような賞を取ったのか」「発表した学説の具体的な内容は」「当該人物の生い立ちは、職歴は」「過去にどのような発言をしているか」「SNS等のアカウントはあるか」……といった内容を入念に調べます。
インタビュアーや雑誌記者はプロですから、ほんの数時間のリサーチでもわたしたち素人が丸一日費やして調べたことより多くの内容を把握することが出来ます。それでも、取材対象のことを調べる時間が十分になかった場合は、十分にコミュニケーションが取れるかどうか、相手から実のある発言を引き出せるかどうか不安になるという方がほとんどです。

お金をもらう仕事だからこそ、取材や事前準備には十分な手間と時間をかける――それがプロ意識であることは間違いないでしょうが、「何も知らない相手と上手く話す」のは喋りのプロにとっても難しいものです。当然、人と話をするのが得意なわけではない私たちにとって、良く知らない相手とコミュニケーションを取るのは簡単なことではありません。
そこで発想の転換が必要になります。私たちがコミュニケーションを苦手とするのは、相手のことを良く知らないからだと。プロの記者やインタビュアーでも相手のことが分からない以上は話を弾ませられず、沈黙に陥ってしまうこともあるのですから、何の事前準備もしない私たちが上手くコミュニケーション出来ればそれはもう奇跡のようなものです。
事前準備として
相手のプロフィール
名前を知らない相手とコミュニケーションを取るのは困難を極めます。また、出身地や年齢などのプライベートの情報も、出来る限りきちんと調べておくにこしたことはありません。好きなものや嫌いなもの、趣味などを知っておくと、スムーズに話を進めることが出来ます。
相手の業績
これから一緒に仕事をする相手であれば、予め業績を知っておくのはとても大事なことです。また相手が会社の中でどんなポジションについているのか、仕事に対してどのような考えを抱いているのかといったことを調査しておくと、相手が「自分のことを知っている」前提で話を始めた時にも対応可能です。
この二つの要素は出来るだけ押さえておきましょう。ただし、プロのインタビュアーや雑誌記者が話す様な相手は事前にプロフィールを公開していることも多く、比較的調べやすいのですが、普段わたしたちが接する相手はプライバシーを大事にしている可能性が高いのです。
無理に相手のことを知ろうとして「あの人はプライベートなことも根掘り葉掘り聞いて来る」と思われては大変ですし、それが周囲に伝わってしまうと誰も相手をしてくれなくなる可能性が生じます。そういうときは、
「あ、これは聞かない方が良かった?」
と相手のプライベートに配慮する姿勢を見せましょう。このワンポイントの遠慮があるかどうかで、相手のあなたに対する印象は大きく変わってきます。何事もほどほどにするのが大事、ということです。